投球動作が原因で発症する肩の痛みの総称を投球障害肩(通称:野球肩)と呼びます。
また、ひとことに「肩」と言っても、筋肉・関節・軟骨など、傷めた部位や程度によって診断名が異なります。
本記事では、代表的な野球肩の症状や原因、予防法をお伝えします。
インピンジメントは英語で『突き当たる』『衝突する』という意味があります。
関節内で骨同士や軟骨、靭帯などがぶつかったり、擦れたりして痛みを引き起こすと考えられていますが、決め手となる画像所見がありません。
特徴的な症状は肩を上げた時の痛みですが、最後まで上げた時よりも、上げる途中や特定の角度で痛みが出現します。
インピンジメント症候群には、以下の2種類があります。
肘から上が外側に開く動き(肩甲上腕関節の外転)に伴い、肩峰と上腕骨頭が衝突し、その間にある組織(棘上筋腱や関節包など)が挟まれることによって発症します。
★ の部分で衝突が起きます。
テイクバックでトップの位置を作り、そこから腕を振り出す際(外転、外旋、伸展)に肩甲骨の前側と上腕骨頭が衝突することで発症します。
繰り返しの投球動作により、腕の後ろ側の筋肉(上腕三頭筋)が引っ張られ、その筋肉の付着部である肩関節の後ろ側に骨棘が形成され、痛みが生じます。
フォロースルーの際に肩の後ろ側に痛みが出るのが特徴で、レントゲンで診断できます。
Superior Labrum Anterior and Posterior lesionの略で、肩関節上方関節唇損傷の事を指します。
投球動作における"トップ"の位置から腕を振り出す際、腕が後方に引っ張られ、上腕二頭筋の付着部にストレスが掛かることによって起こります。
SLAP損傷は4つのステージに分類され、重度の症状では手術が必要となる場合もあります。
上腕二頭筋とは肘を曲げる筋肉(力こぶ)で、長頭と短頭があります。
その長頭と骨との摩擦により炎症が起きることで痛みが出現します。
症状としては、SLAP損傷と同様に"トップ"から腕を振り出す際や、フォロースルー動作で腕を内側に捻る際の痛みが特徴です。
成長過程にある小・中学生では、腕や足の骨に『骨端線』というものがあります。
骨端線とは、骨が成長するために骨幹と骨頭の間が軟骨になっており、その部分で新しい骨組織が作られます。
軟骨組織ですので、通常の骨よりも脆く、繰り返しの投球動作による牽引ストレスで骨端線が開いてしまう事をリトルリーガーズショルダーと言います。
これはレントゲンで明確に見られる症状ですので、リトルリーガーズショルダーと診断された場合にはすぐに投球動作を中止し、医師の指示に従い安静にしてください。
痛みを我慢して投げ続けると、骨の変形や左右の腕の長さが変わってしまう事もあります。
腱板とは、棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲骨下筋肉それぞれの腱により、上腕骨骨頭を包むように付着して構成されています。
上記4つの筋肉は『ローテーターカフ』と呼ばれ、肩を上げたり捻ったりする作用があります。
繰り返しの投球動作により、この腱板が傷ついてしまうことを腱板損傷と言い、微細な損傷(腱板炎)から完全断裂まで程度により症状も異なります。
棘上筋や棘下筋を支配している『肩甲上神経』がフォロースルーの際などに引っ張られて損傷してしまう病態です。
肩の後ろ側にピリピリとした痛みや脱力感が出現します。
また筋肉が萎縮してしまうと、肩甲骨の山(肩甲棘)が浮き出て見えるようになります。
野球肩には様々な原因が複雑に絡み合うことがあり、個人差も大きいです。
考えられる主な原因としては以下の通りです。
リリース時の肘下がり、体の開きが早い、重心移動が不十分、肘を背中側に引きすぎるなど、体に負担の大きいフォームで投球動作を繰り返すと、怪我に繋がりやすくなります。
体が本来持っている関節可動域に対して筋肉が硬くなり伸長性が欠けてしまうと、引き伸ばされた際に大きな負担となります。
また、掛かる衝撃に対して支える筋力が弱かったり、関節が硬く衝撃をうまく逃がさなかったりすると、体が耐えられなくなり怪我に繋がりやすくなります。
猫背、巻き肩、骨盤の後傾など、姿勢が悪くなってしまうと関節本来の動きからズレてしまい、滑らかな動きが失われてしまいます。
それにより、体への負担が大きくなってしまうのです。
負担のかかる投球数は年齢や個人によって大きく異なりますが、最近では球数制限が設けられる大会が増えてきました。一日の投球数だけでなく、休養日を作ることも大切です。
日本では怪我なく活躍できた選手がメジャーに移籍した途端に怪我をしたという話も聞かれます。その原因の一つに『マウンドの硬さ』が挙げられますが、グラウンドコンディションに応じてスパイクを使い分けたり、インソールを変えたりする必要もあるのかもしれません。
体が疲れていると筋肉も緊張しやすく、可動域も狭まってしまいます。
また、投球動作によって体は微細なダメージを受けている為、早期に回復させるためには充分な栄養が必要となります。
ストレッチを行なうことで関節の可動域を確保できるだけでなく、血行を促進し疲労回復にも役立ちます。
ストレッチはセルフケアの代表格とも言えるので、習慣づけておくと良いでしょう。
肩周りの動きに関与するのが、先述した『ローテーター・カフ』と呼ばれる4つの筋肉(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)です。
チューブトレーニングでこれらの筋肉に刺激を与えることにより、スムーズな動きを獲得できます。
関節可動域を確保できていない状態でいきなり全力投球すると、体には大きな負担がかかります。
十分なウォーミングアップを行い体を温め、関節がフルに動く状態にしてから少しずつ強い球を投げるようにしましょう。
野球肩には様々な要因が重なり合っている場合があります。
ストレッチや日ごろのトレーニング、食生活も含めたセルフケアで予防し、それでも痛みが出てしまった場合は無理をせず、できるだけ早い段階で専門家に相談すると良いでしょう。